日本年金機構を名乗る「補足情報の提出について」というメールは、公式に掲載されている偽メールの件名です。案内から専用アプリを入れたり、個人情報を送ったりせず、メールを離れて手続きの有無を確かめてください。
『ハテナのつづき』のナギです。「年金の審査に必要」と言われると、放っておいてよいのか迷いますよね。2026年10月27日に確認した公式情報をもとに、メールの特徴と、すでに操作した場合の対処を整理しました。
「補足情報の提出について」は公式が示す偽メール
日本年金機構の注意喚起ページには、「【ご案内】補足情報の提出について|日本年金機構」という件名が、不審なメールの一例として載っています。差出人の表示も日本年金機構ですが、同機構から送ったメールではありません。
しかも、件名だけの注意喚起ではありません。掲載された本文には、年金手続きの審査に追加情報が必要だとして、専用アプリをダウンロードさせる案内まであります。アプリへの誘導は、公式の掲載例で確認できる内容です。
ただし、同じ件名のメールがすべて同じ本文やファイルとは限りません。公式の掲載例で分かる手口と、手元に届いたメールで何をしたかは別々に考えましょう。アプリの名前や機能を、件名だけから決めつけることもできません。
「審査が保留になる」で操作を急がせる
このメールが気になるのは、いきなりお金を要求せず、手続きの続きに見せているところです。公式の掲載例では、申込み済みの年金手続きに追加情報が必要だと説明し、提出しなければ審査が保留になる可能性を示しています。
その後、アプリの取得、情報の入力、提出へと進ませる構成です。「数分で終わる」「審査を再開する」といった説明があっても、その約束が本当になるわけではありません。わたしは、必要そうに見える案内ほど入口を確かめたいです。
年金関係の申請中だと、偶然タイミングが重なることもあるでしょう。心当たりがあること自体は、メールの正当性を証明しません。申請先の年金事務所などへ別の経路で問い合わせれば、不審なリンクを使わずに確認できます。
本物の年金メールまで全部無視していい?
日本年金機構からのメールが、すべて偽物というわけではありません。「ねんきんネット」などの正規のお知らせもあります。だからこそ、差出人に機構名があるかだけで判断するのは難しいんですよね。名前の表示は判断の決め手になりません。
公式の注意喚起でも、送信元アドレスが偽装される場合があると説明しています。ロゴ、署名、丁寧な日本語がそろっていても、それだけでは本物と確認できません。見た目を点検して安全だと思い込み、リンクを開くのは避けたいところです。
手続きが気になるときは、普段使っているブックマークなどから日本年金機構の公式サイトを開きます。問い合わせ先も公式サイトから探し、届いたメールへの返信や、本文に書かれた電話番号による確認は使わないようにしましょう。
専用アプリと言われても、その場では入れない
「年金手続きのためのアプリ」と説明されると、公的なものに感じるかもしれません。でも、説明した相手の身元が偽られていれば、その説明も信用できません。今回の公式掲載例にあるアプリ取得ボタンは、利用してはいけない入口です。
年金を口実にした偽アプリの事例は、過去にも公表されています。デジタル庁は2024年3月26日、年金事務所を名乗る電話から、マイナポータルの偽サイトや偽アプリへ誘導された事案を注意喚起しました。これは今回のメールとは別の事案です。
その過去事例では、偽サイトからAndroid用のアプリファイルを入れるよう誘導されていました。正規のマイナポータルにもアプリはありますが、似た名前なら安全という意味ではありません。必要なアプリは、公式サイトの案内から確かめます。
リンクを開いたときは、どこまで進んだかを整理
うっかりリンクを押してしまった。そんなときは、画面を閉じて、追加の操作を止めましょう。リンクを開いたことだけで感染したとは断定できませんが、情報の入力やダウンロードなども行ったかによって、必要な対処が変わります。
入力、通知の許可、ファイルの保存、アプリの導入は、それぞれ別の操作です。何をしたか思い出せない場合も、画面の説明に従ってやり直す必要はありません。受信したメールや、おおよその操作時刻を残して相談する材料にできます。
| 行った操作 | 対処の入口 |
|---|---|
| リンクを開いただけ | 画面を閉じ、入力やダウンロードをしていないか整理 |
| 通知を許可した | ブラウザの設定で不審なサイトの通知許可を解除 |
| 情報を入力・送信した | 入力した情報に応じて、正規のサービスや金融機関へ連絡 |
| ファイルを保存した | 開いたり実行したりせず、導入まで進めていないか整理 |
| アプリを入れた | 使用を止め、削除や端末確認について相談 |
情報を入力したら、入力した先ではなく正規窓口へ
ログイン用のパスワードを入力した場合は、安全を確認できる端末から、そのサービスの公式サイトやアプリで変更します。同じパスワードをほかでも使っているなら、使い回しているサービスについても変更が必要になります。
カード情報や銀行の認証情報を入れた場合は、カード会社や金融機関へ速やかに連絡してください。利用明細や公式サイトなど、メールとは別の場所で連絡先を確認します。暗証番号やワンタイムパスワードまで渡した場合も、その内容を伝えます。
氏名や住所、年金関連の番号、本人確認書類の画像を送った場合は、何を送ったかを記録し、日本年金機構など関係する正規の窓口へ相談します。情報を取り消そうとして、不審な相手に返信したり、追加の証明書を送ったりしないでください。
アプリを入れた場合は、削除だけで安心と決めない
不審な案内からアプリを入れた場合は、そのアプリを使って手続きを続けないでください。デジタル庁は、先ほどの偽アプリ事案で、インストールしないこと、入れてしまった場合は直ちにアンインストールすることを案内しています。
ただ、削除できたことと、送ってしまった情報や与えた権限の影響がなくなることは別です。アプリ名、入れた時刻、許可した操作、入力した内容を整理し、IPAの情報セキュリティ安心相談窓口や端末メーカーなどへ相談しましょう。
遠隔操作や画面共有まで許可した場合は、その接続を止め、必要に応じて端末の通信も切ります。パスワード変更や金融機関への連絡には別の安全な端末を使います。仕事用の端末なら、初期化などを自己判断で進めず、管理者にも知らせてください。
「手続きが必要か」はメールの外で確かめよう
不審メールの情報提供と、自分の年金手続きの相談は目的が違います。日本年金機構は、不審メールを発見した場合の連絡先として「日本年金機構へのご意見・ご要望」を案内しています。実際の申請については、公式の相談・手続き窓口を利用します。
今回、確認できた公式ページの更新日は2026年10月19日です。10月22日という別の紹介日付と、被害の発生日や公式発表日を混同しないようにしました。記事の確認日は10月27日ですが、その後も同じ内容のメールだけが届くとは限りません。
メールの確認や相談に必要な記録を残したら、利用中のメールアプリの迷惑報告機能などを使い、削除します。年金の案内をすべて無視する必要はありません。届いたメールの入口を使わず、正規の窓口で確かめる。それが、必要な手続きを守る行動になります。




