『薬屋のひとりごと』で壬氏が口にする「さわりがある」は、「障りがある」、つまり「差し支えがある・そのままでは困る」という意味です。場面に合わせて言い換えると、猫猫の手の位置に困り、どけてほしいと伝えています。
『ハテナのつづき』のナギです。耳で聞くと、身体のどこかの名前にも思える言葉ですよね。この記事では語義と場面の事情を整理します。アニメ第36話「華瑞月」と、壬氏が宦官ではないと猫猫が気づく場面のネタバレを含みます。
「さわり」は漢字にすると分かりやすい
ここでの漢字は「障り」です。「差し障りがある」の「障り」と考えると、ぐっと身近になります。「さわり」という響きだけで特別な隠語と決めなくてよいわけです。難しい専門用語ではなく、何かが都合よく進まないことや、支障になることを表す日本語なんですね。
たとえば、説明用の例文なら「作業の障りになる」は「作業の妨げになる」ということ。「障りがない」なら「差し支えがない」と言い換えられます。同じように壬氏の言葉も、何かに困っているという意味で受け取れます。
ただし、辞書に意味がいくつか載っていても、全部を一つの台詞に重ねる必要はありません。前後の発言が、意味を選ぶ助けになります。この場面で手がかりになるのは、壬氏が猫猫の手を問題にしていること。「そのままでは困る」が会話につながる読み方です。
- 日常の言葉に置き換えるヒント
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「差し支えなければ」は「問題がなければ」、「差し障りのない返事」は「問題を起こさないような返事」ということ。「障り」だけだと聞き慣れなくても、関連する表現を思い浮かべると、困る事情を表す言葉だとつかめます
壬氏は猫猫の手の位置に困っている
では、何が困るのか。猫猫の手が、壬氏の股間に触れてしまっているからです。言葉そのものは控えめですが、場面には性的な含みがあります。「さわり」は男性器の名称なのか、と迷いやすいのもこのためでしょう。ただ、語義と台詞の含みは別なんです。
意味を取り違えないためには、触れてしまった場所と、その状況を説明する言葉を区別するのが大切です。男性器は猫猫が触れた対象。「障り」は、その手の位置では壬氏に差し支えがある、という側の言葉です。場所を名指ししないぶん、分かりにくいんです。
「手がそこにあると困るので、離してほしい」。これが場面に合わせた平易な言い換えです。元の台詞の引用ではありませんが、言葉の意味をつかむには、このくらい率直な表現に置き換えると伝わりやすいと思います。「障りがある」の後ろに、困る事情が省略されていると考える形です。
「蛙」の話になるのは、秘密を聞きたくないから
猫猫が驚くのは、単に気まずい場所へ触れたからだけではありません。壬氏は宦官だと思われていた人物です。それなのに、去勢されているはずの宦官にはないものの感触がある。これまでの前提が崩れる出来事でした。説明より先に、身体から気づいてしまいます。
そこで出てくるのが「蛙」です。猫猫は、触れたのは蛙だったということにして話をかわします。事情を理解できないまま動物と勘違いした、というより、分かってしまったことを認めず、秘密から離れようとする言い逃れなんですね。蛙という言葉の辞書的な意味だけを調べても、この意図はつかめません。
壬氏にとっては自分のことを伝えるきっかけでも、猫猫にとっては面倒に巻き込まれる入口。この受け止め方の違いが、二人のやり取りをおかしくしています。「さわり」の意味が分かると、その後の蛙の話にもつながります。
ナギ気づかなかったことにしたい猫猫の必死さが、蛙という言い訳に表れていますね
何話か探すなら第36話「華瑞月」
アニメでこの場面を探すなら、通算第36話「華瑞月(カズイゲツ)」です。第2期の中では第12話に当たります。「第36話」と「第2期12話」は同じ回を指しているので、話数の表示が違っていても慌てなくて大丈夫です。期内と通算の違いです。
前の回から続く襲撃の流れで、猫猫と壬氏は滝壺の洞窟へ逃げ込みます。その中で起きたアクシデントが、手の位置と蛙をめぐるやり取りにつながります。探すときは、話数に加えてサブタイトルも目印になります。蛙をめぐる場面を見たい場合、後の「踊る幽霊」と取り違えないようにしたいところです。
この回では、言葉を辞書どおりに置き換えるだけでなく、壬氏が何を伝えようとし、猫猫が何を避けようとしているかにも注目です。事件の緊張が続く中で、二人が別々の事情に焦っている。そのずれが見どころだと感じます。
「触り」や薬の副作用と混ぜないで
「さわり」は音だけでは意味を決めにくい言葉です。「手触り」なら触れたときの感じ、「話のさわり」なら話の要点や聞かせどころ。壬氏の台詞では、そうした意味を当てはめると会話がつながらなくなります。触れる場面だから「触り」と考えたくなるのですが、発言の役割が違います。
また、「障り」には辞書上、身体の具合への悪い影響や月経を表す用法もあります。とはいえ、この台詞を月経の話として読む理由はありません。作品名に「薬屋」とあっても、「さわり」がそのまま薬の副作用を意味するわけではないんです。
場面に身体の反応が含まれることと、単語が反応そのものの名称であることも別です。「さわり=勃起」と一語で覚えると、語義を狭めすぎます。ここでは、触れられている状況への差し支えを、遠回しに伝えた言葉として理解するのが自然です。
| 言葉 | ここで覚える意味 |
|---|---|
| 障りがある | 差し支えがある・困る |
| 手触り | 手で触れたときの感じ |
| 話のさわり | 話の要点・聞かせどころ |
| 作中の蛙 | 猫猫が秘密を避けるために持ち出す言い逃れ |
Web版は同じ言葉でも場面の細部が違う
作者・日向夏さんのWeb版にも、同じ言葉が登場します。掲載先は『薬屋のひとりごと』の「宮廷編2」にある「二十、熱後編」。ページ上のエピソード番号は76です。アニメ第76話という意味ではないので、ここは混ぜずに。
Web版では、壬氏が猫猫の手の位置を指摘する形で「さわり」が使われています。ただし、そこへ至る出来事や周囲の状況はアニメと同一ではありません。Web版の説明を、そのままアニメのあらすじとして当てはめないほうがよさそうです。意味の確認と場面探しでは、読む場所も変わります。
また、Web版のエピソード番号、文庫の巻数、漫画の話数は、それぞれ別の数え方です。同じ作品名でも番号だけを頼りにすると違う箇所へたどり着きます。番号が違うだけで、間違いとは言えないんですね。アニメなら「華瑞月」、Web版なら「二十、熱後編」という題名で探せます。
言葉が分かると、二人の距離も少し見えてくる
わたしがこの言葉で面白いと感じるのは、直接的に言わないぶん、かえって壬氏の困り方が伝わるところです。露骨な説明を避けた「障りがある」という言い方に、普段の落ち着いた印象とは違う、取り繕いきれない感じが出ています。
猫猫の側にも、秘密を知るほど相手へ近づける、とは喜べない事情があります。知らずにいたい気持ちまで含めて読むと、単なる男女の気まずいやり取りより、少し複雑な場面に見えてきます。これは描写に対するわたしの受け止め方です。宦官でないと気づくことと、身分や出自をすべて知ることも別なんですね。
意味を確かめてから第36話に戻るなら、台詞の直後の反応に目を向けてみてください。壬氏の困惑と猫猫の回避が、同じ出来事から違う方向へ動いています。言葉の引っかかりがほどけると、そのやり取りを味わいやすくなります。





